Interview   vol.06

心臓血管外科医師

奈良原 裕 Yutaka Narahara

企業勤めの営業職から、医師への転身。
異色のキャリアを持つ心臓血管外科医師の奈良原先生。
現在は医療過疎地における診療支援として、「日帰り地域診療」という名のワーケーションを実践中。ご自身の経験や、医師としての視点からお話をいただきました。

インタビュー:KomfortaWorkation 山根好子

Interview   vol.06

心臓血管外科医師

奈良原 裕 Yutaka Narahara

企業勤めの営業職から、医師への転身。
異色のキャリアを持つ心臓血管外科医師の奈良原先生。現在は医療過疎地における診療支援として、「日帰り地域診療」という名のワーケーションを実践中。ご自身の経験や、医師としての視点からお話をいただきました。

インタビュー:KomfortaWorkation 山根好子

医師としてのワーケーション体験と変化

ー奈良原先生のこれまでのワーケーション体験について教えていただけますか。

私の場合は職業が医師ということもありますので「日帰り地域診療」を「ワーケーション」としてお話します。2016年9月に、新潟県十日町市にある医療過疎地域での日帰り診療から始まりました。その後、新潟・北海道・長野、と5年弱、医師不足で困っている地域の医療に携わっています。

この活動を始める以前は、後輩も少なく自分がすべての患者さんを診なくてはいけなくて、結構ずっと忙しかったのです。しかし、心臓外科医として10年が経って後輩も出来たことから、週1日意図的に休んでボランティアをしたいと思ったのが、日帰り地域診療に挑戦するきっかけとなりました。

―なるほど。日帰り地域診療を始める前と後で、自分の中で変わったことや、メインで勤務している病院でのお仕事に変化はありましたか?

まず、すごく忙しい中から抜け出している感じがありましたね。それまでは忙殺されて7日間があっという間だったのが、1日だけでもいつもと違う仕事をすることで、残りの6日間のクリエイティブ感が上がりました。

例えば日帰り地域診療では片道3時間くらいかけて新幹線に乗って行くような、長い通勤時間がかかるのですが、その間に色んなアイディアを考え、整理することができるので、その頃から多岐にわたる構想を練られるようになりました。その結果、心臓外科以外の仕事にも色々チャレンジできるようになっています。
そういった経験から、今はそこまで忙しくないけれど敢えてどこかに行く、という感覚で日帰り地域診療を続けていますね。

―他にも、地域とのつながりやご自身の交友関係で変わった面などはありましたか?

今まで3か所のまちで日帰り診療をしてきましたが、山里にある診療所にいた時は、住民の皆さんとのお付き合いは結構濃厚でしたね。まちを歩いていると、「診療所の先生ですよね」と声をかけられることも(笑)
当時の患者さんが旅館を営んでいる方で、その診療所での勤務を終えた今でもプライベードで泊まりに行くことがあります。

一方で、どこまでいっても『そのまちの人』にはなれない、とも感じました。コミュニティの一員ではなく、あくまでゲストとして、皆さんに良くしていただきました。こちらも、ゲストなりの距離感を保ってお付き合いをしていったからこそ、今でも交友関係が続いているのかなとも思います。

現在日帰り診療で行っているまちでは、その地域に住んでいる友人を通じて交流を深めています。

―お仕事や地域での交流などの変化を通じて、よりクリエイティブなアイディアが湧いてくる、というのは面白いですね。
今後さらにこんなことをしてみたい!と思っていることはありますか?

1か所目にやりたいと思っていたけれどできなかったこととして、子供たち向けの活動があります。子供たちにお医者さん体験・触れてもらう体験です。というのも、触れたことのない仕事は、子供たちの将来の夢にならないと思うのです。小学校低学年くらいの子供たちに、手術着を着せて手術体験やお医者さん体験のようなことをして医療に触れてもらうことで、お父さんお母さんが病院勤めじゃなくても、医療従事者を将来の夢に描いてもらえる機会になると思っています。実際、この話を進めていた途中で任期が終わってしまってそのまちではできなかったのですが。

もし、地域側が望んでくれるのであれば、ワーケーションする側が持っているコンテンツをまちに提供するということも出来たら良いなと思います。

ワーケーションが与える心身への影響、メリット

―元サラリーマンであり、産業医としてもお勤めの医師の視点で、企業勤めの方がワーケーションを実践することで心身に影響がありそうだと思う点を教えてください。

まず、在宅で仕事をするという形において、身体ももちろんですがメンタル的に落ち着かないという話は実際によく聞きます。お客様とのやりとりでのストレスが強くなったり、焦燥感、取り残され感を感じたりする方もいらっしゃいます。自宅にいる時間が長くなって飲酒量が増える、運動量が減って結果的に体調を崩すというお話もたくさん出ています。

在宅ワークの良くないところは、ずっと家にいるので、寝る・起きる・仕事するといった生活のメリハリがなくなることだと思います。ワーケーションによって、緑があったり空気がきれいだったり、パッと見て違う環境に身を置くのは大事かなと。
それに、普段会わない友人に会えることって楽しいですよね。在宅で悶々としているときに、ワーケーションを通じてそういう人に会えたらやっぱり楽しいし、気晴らしになります。

―確かに、環境を変えることで心身の切り替えはしやすくなりますよね。

経験上、場所や環境だけを変えても、いつもと同じ仕事をすると面白くないのですよね。内容を変えるほうがいいです。日頃からやっている仕事なら、いつもの整理整頓されたデスクでやった方がはかどるということもあると思います。
正直、コロナ禍におけるワーケーションは(自粛の要請や、感染症対策の面から)しづらい面もあると思います。でもワーケーションは上記の通り、日頃と違う行動になるので、環境さえ許すなら、ワーケーションした方がいいなと思う面はあります。

―最後に、私たちKomforta Workation(コンフォルタ・ワーケーション)の掲げているワーケーション「Work × Location × Connection」の考え方や、その人の人生自体を豊かにしていくというコンセプトのワーケーション体験に、共感や期待するところを教えてください。

Workationの中に「Location」「Connection」を加えるのには賛成です。ただ、Connectionは一方的ではダメだと思っています。都会の人間が行って楽しむだけ、という一方的なものではなく、ワーケーション先の地域にとってメリットがないと「Connection」にはならないですよね。

ワーケーションに行った先で、「地域に行って求められることを提供する」という意識も大切かなと思います。例えば私が田舎で内科医の仕事をすること自体は、本業である心臓外科の知識に直接的に結びつくことはないですが、人間力は広がっていく経験だと思っています。こういった活動をしているのを見た他の医師や患者さんが興味や信頼を寄せてくれることで、心臓外科医としても間接的、遠回りにでもいい影響が出ています。

せっかくワーケーションをするのであれば、ダイレクトなメリットや一方的な楽しみだけのことを考えすぎずに、自分がお世話になるまち、人に何が還元できるのだろう?と意識して関わっていくことも、長い目で見て良い経験を成立させていくコツではないかなと思います。

【プロフィール】
奈良原 裕 氏
菊名記念病院 心臓血管外科部長

中央大学法学部法律学科を卒業後、三菱石油株式会社(現JXTGエネルギー株式会社)に入社。営業・販売促進業務に約5年間従事し、退社後1年半の受験期間を経て高知大学医学部へと再入学。卒業後は、外科・高度救命救急を学んだのち心臓血管外科の道へと進む。38歳から心臓血管外科医を目指し、大学医局に所属せずに最短期間で難関の心臓血管外科専門医資格を取得。現在、主任執刀医として年間150例以上の手術を執刀している。
その他、日系ロシア法人MTC JAPAN顧問医師としてロシア・サンクトペテルブルク在留邦人への遠隔医療サービス、子どもたちの将来の選択肢を拡げる学童保育活動、医療過疎地における診療支援など多面的に取り組んでいる。

奈良原様、ありがとうございました!

せっかくいったまちで知り合った人たちに、何が還元できるのか。双方向のConnectionが大切という言葉に唸りました。よい人間関係・よい経験ができるようなワーケーション先をこれからも提供していきます!

次回のインタビューもお楽しみに!

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